第314回 渡辺監督・名将の風格

 日本シリーズ最終戦、スタメン9選手の年俸総額は巨人17億250万円、埼玉西武5億5500万円(いずれも推定)。西武は巨人のおよそ3分の1。巨人・李承の年俸が6億円だから、彼ひとりの年俸で西武のスタメン9人が雇える計算になる。  しかも勝ったのは西武だった。就任1年目の渡辺久信監督の采配が節目節目で的中した。最終戦、同点のホームを踏んだ片岡易之は死球で出るなる2盗を決め、中島裕之のボテボテの3塁ゴロの間にホームベースを駆け抜けた。  試合後、殊勲の片岡は「このシリーズ、待てのサインは一度もなかった」と語った。

アヤックスの機能美が破綻するとき。<前編>

 フットボールはチェスに似ている。いや、チェスはフットボールに似ている、といった方が正しいかもしれない。  父親が子供にチェスを教える時、最初にいう言葉はいつも決まっている。 「あらゆる局面で数的優位をつくれ」  モダンチェスの現場において、いきなり敵陣深く攻め入り、クイーンやキングを追い詰めるという戦術は存在せず、地道に8個のポーンを収集にかかる。  この前線の二等兵をいかに攻め落とすかが前哨戦のカギであり、敵陣をカタストロフに陥れ、キングの首をはねるシナリオの断片をそこに見出すことは難しい。

第360回 ひとつの時代に幕、ホンダのF1撤退

 20世紀は「自動車の世紀」であったとも言える。米国においてモータリゼーションが始まったのは1900年代初頭。やがてこれは全世界に広がり、市民生活の向上や産業振興がはかられた。  本格的な自動車レースも20世紀になって産声をあげた。1906年、フランスで初の四輪グランプリである「ACFグランプリ」が開催され、戦後、規格が整えられてF1へと発展していく。1906年といえばホンダの創業者・本田宗一郎が誕生した年でもある。不思議な因縁を感じずにはいられない。

第313回 寄らば……でなく打倒大樹で「筋を通す男」 横浜・三浦大輔投手

 関西のスポーツ紙は勝とうが負けようが、雨が降ろうが雪が降ろうが、一面は阪神ネタと相場が決まっている。  と言えば少々オーバーかもしれないが、少なくとも東京のスポーツ紙が一面に巨人ネタを持ってくる割合と比較すると、これはもう倍以上の差があるのではないか。

第312回 日本球界に求められるアジアでの役割

 日本シリーズ終了直後に行なわれるアジアシリーズは、どことなく“付け足し”のイメージがある。メディアの扱いもWBCや日本シリーズに比べれば、格段に小さい。日本、韓国、台湾、中国のチャンピオンが集まり、アジアナンバーワンのチームを決める大会であるにもかかわらず……。

第358回 WBC代表入りのガイドラインを作るべき

 少々、意地悪な物の見方をしてみる。仮にWBC東京ラウンドの主催者が読売新聞社ではなく中日新聞社だったとする。果たして中日の候補選手5人全員が代表入りを辞退するなんてことがありえただろうか。今回の中日の“集団ボイコット”に球団エゴの匂いが消えないのは、そんな背景が見え隠れするからだ。

第357回 円高はJリーグが存在感示す好機

「いくらチャンピオンズリーグとはいえ3階席で37ポンドだよ。日本円で約6000円(当時)。これじゃフットボールは“庶民のスポーツ”とは言えないな」。過日、川淵三郎氏と会食する機会があった。この10月、オールド・トラフォードでマンチェスター・ユナイテッド対セルティック戦を観戦した時の話。日本人観光客にチケットの値段を聞いたところ、先の答えが返ってきたという。プレミアリーグの入場料は平均8000円。高騰する年俸が入場料にはね返る。

森・西武野球は何を残したか<後編>

 92、93年と2年連続で日本シリーズを戦った森祇晶と野村克也。イメージで語れば前者が「勝負の鬼」であるのに対し、後者は「野球の鬼」である。将棋の世界でいえば、大山康晴名人と升田幸三名人の関係に似ている。「勝負の鬼と将棋の鬼が戦ったら、最終的に勝負の鬼が勝つ」。米長邦雄名人のセリフである。今回、紙一重の差で「野球の鬼」が「勝負の鬼」に勝ったが、2人のイメージが入れかわったとは思わない。

第309回 いま再び「野茂教室」が日本球界を変える オリックス臨時コーチ・野茂英雄氏

 今年7月、現役引退を表明した野茂英雄が、11月12日から3日間限定でオリックスの臨時投手コーチを引き受けることになった。  野茂に臨時コーチを依頼したのは近鉄時代の先輩である大石大二郎監督。野茂は今でも近鉄時代の元チームメイトたちと良好な関係を保っている。

第354回 残念だった“非公開”WBC監督人事

「後医は前医を批判せず」。医療の世界にはこんな不文律がある。元々は貝原益軒の「たとえ誤るとも、前医をそしるべからず」という言葉に端を発している。  良心的に解釈すれば病状は日々刻々、変化する。医師はその場その場で全力を尽くしているのだから、後で診た者がああだこうだと治療法の是非を論じるのはアンフェアだということなのだろう。かつてはこの姿勢を貫くことこそが医師の美徳とされてきた。

森・西武野球は何を残したか<中編>

 西武で11年間にわたってピッチングコーチを務めた八木沢壮六(現千葉ロッテ監督)が森野球を分析する。 「森さんの野球は、まず1点をとる野球。森さんは“守りの野球”を標榜していますが、点が入ってないことには、守るものがないでしょう。  初回からでもバントを使うのは、とにかく1点を先にとり、相手にプレッシャーをかけるため。相手が点を追いかけるパターンになれば、それに対応する形で、いろんな手が打てる。そういう状況になって初めて3人のリリーフ投手もいきてくるわけです。西武からロッテにきて、西武の1点がいかに大きくのしかかるかということが分かりました。今後、西武に勝つには、とにかく先に点を与えないこと。それが鉄則です」

第353回 真のWBCへ イチローの重い問いかけ

「北京の流れから(WBCを)リベンジの場ととらえている空気があるとしたら、チームが足並みを揃えることなど不可能」。目の覚めるような正論だ。一部に「一選手が言うべきことではない」との声もあるが、誰かが言わなければならなかったことだ。イチローの男気に敬意を表したい。

第352回 球界の命綱「時間短縮」もっとシビアに

 教師が答案用紙に採点結果を書いて生徒に返すだけでは教育とは呼べない。指導とも呼べない。なぜこの点数になったのか、冷徹な検証が必要である。  今季のプロ野球は「試合時間マイナス6%」を目標にスタートした。過去10年間の平均試合時間は3時間18分。つまり12分短縮の3時間6分が目標だった。

第305回 満を持して「日の丸」を背負う安打製造機 横浜・内川聖一内野手

 これまで、プロ野球における右打者の最高打率は1999年、横浜のロバート・ローズが記録した3割6分9厘。それを超えての首位打者獲得がほぼ確実になった。  横浜の内川聖一が打ちまくっている。10月8日現在、132試合に出場して打率3割7分8厘。打率に加え、安打数(185本)、得点圏打率(4割5分)もリーグ最高。打ち出の小槌を持っているようなものだ。

森・西武野球は何を残したか<前編>

 日本シリーズ20連勝という森監督の不敗神話にピリオドが打たれた。このシリーズ、ライオンズは先取点を奪った3試合を全てものにし、先取点を奪われた4試合を全て失った。結論をいえば、今年のライオンズには試合を引っくり返すだけの力がなかった。徳俵で相手の寄りをこらえるだけの力はあっても、寄り返し、反対側の土俵の外に相手を投げ捨てるだけの底力は持ち合わせていなかったのである。

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