第504回 アクシデントを乗り越えて高く羽ばたけ 広島・會澤翼捕手

 その瞬間、球場中が凍りついた。ひび割れたヘルメットのツバが事態の深刻さを物語っていた。  8月2日、横浜スタジアム。横浜DeNA対広島。9回表1死一、二塁の場面で広島ベンチは代打に思いっ切りのいいバッティングが持ち味の會澤翼を送った。

若きタイトリストの明日 小久保裕紀

 球界を代表するスラッガーが、ついにバットを置く。14日、福岡ソフトバンクの小久保裕紀が今季限りでの引退を発表した。小久保はプロ入り2年目の1995年にホームラン王を獲得し、97年には打点王に輝いた。今季は6月に史上41人目の通算2000本安打を達成。プロ19年間で、積み上げてきた本塁打(411)と打点(1290)は金本知憲(阪神)に次ぐ現役2位(17日現在)の記録だ。しかし、「フリー打撃でボールが飛ばなくなった」などの衰えを理由に、ユニホームを脱ぐことを決意した。誇り高きホームランアーティストらしい幕の引き方と言えるだろう。  ミスターホークス・小久保のホームランへのこだわりを、16年前の原稿で、振り返る。

第550回 戦争で散った沢村のライバル・景浦将

 地方球場でオールスターゲームを2度開催したことがあるのは松山市の坊っちゃんスタジアムだけだ。球場名は言うまでもなく松山が舞台となった夏目漱石の小説「坊っちゃん」に由来する。ファウルグラウンドを除き、総天然芝の素晴らしい球場である。  球場名が公募された際、私は用紙に「景浦将記念スタジアム」と書き込んだ。その名を球場名に冠することで、地元が生んだスーパースターの功績を永久に語り継げるのでは、と考えたのだが、残念ながら一顧だにされなかった。

第503回 イチロー、電撃トレードの背景

 イチローがマリナーズからヤンキースに電撃トレードされた。若手投手2人プラス金銭との交換トレードだった。7月30日には本拠地ヤンキースタジアムで、オリオールズのミゲル・ゴンザレスからメジャーリーグ通算100号を放つなど健在ぶりを発揮している。  チームは8月1日現在、アメリカンリーグ東地区の首位。2位オリオールズに6.5ゲーム差をつけている。イチローがポストシーズンゲームに出場すれば2001年以来、2度目ということになる。「一番勝ってないチーム(マリナーズ)から一番勝っているチーム(ヤンキース)に移る」実感を今イチローは味わっているはずだ。

☆五輪特別編☆高橋尚子「勝負の分かれ目」<後編>

 おそらく日本中の視聴者があるシーンを脳裡に思い浮かべたに違いない。  今年1月に行われたシドニー五輪選考を兼ねた大阪国際女子マラソン。日本の弘山晴美は35km地点でスパートをかけ勝負に出たものの、シモンの驚異的な粘りにあい、競技場に入る直前で逆転されてしまう。  このとき、シモンは氷のような表情を少しも緩めることなく、次のように言い放った。 「私の方が少し根性があったようね」

第548回 「選択と集中」よりも日本の底力を

 JOCはロンドン五輪での目標を「世界5位以内」と定めた。何を持って5位以内とするのか。言うまでもなく、それは「金メダル数」である。  本紙の国別メダル表を見ても分かるように金メダルの数が順位を決定する。大会4日目が終了した時点で日本は金1、銀4、銅6の計11個のメダルを獲得しているが、順位では金2、銀2、銅2の韓国、さらには金2のカザフスタンにも及ばない。この時点では9位だ。

第501回 宙に浮いた侍ジャパンの着地点はどこか 日本プロ野球選手会・新井貴浩会長(阪神)

 苦渋の決断であることは、伏し目がちなその表情が物語っていた。  労組・プロ野球選手会がオールスターゲーム期間中の7月20日、大阪市内で臨時大会を開き、来年3月に開催予定の第3回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に参加しないことを決議した。  記者会見の席で労組・選手会の新井貴浩(阪神)会長は、こう語った。 「選手も楽しみにしていました。当然見たかったと思うし、出たかった。ただ5年後、10年後を見たとき、今回のことは間違ってなかったと信じています」

第500回 中日3連覇に“黄信号”!?

 サードベースコーチはプロ野球における10人目のプレーヤーである。それを証明したのが1987年の西武対巨人の日本シリーズだった。  第6戦の8回裏。2対1と西武が1点リードで迎えた2死一塁、西武・秋山幸二の打球はセンター前に飛んだ。  普通なら一、三塁の場面。ところが一塁ランナーの辻発彦はノンストップで三塁ベースを駆け抜け、本塁を奪ったのである。

第546回 センターの方がおいしい!? カープ・堂林

 自虐的なプロモーションが逆に受けているらしい。広島に行くたびに目にするのが「おしい! 広島県」のタイトル入りポスター。地元出身の毒舌タレント有吉弘行をメインキャラクターに起用している。  レモンの生産量は日本一。カキやお好み焼きなど、おいしいものがたくさんありながら、いまいち浸透し切れていない。そこで「おしい」から「おいしい」へとのコンセプトの下、広島県を売り込もうとの戦略だが、ポスターを見ていて不意に頭に浮かんだのが売り出し中のカープ堂林翔太だ。3年前の甲子園では中京の「4番・エース」として全国制覇に貢献。ドラフト2位でプロ入りした。広島ではプリンスと呼ばれている。

☆五輪特別編☆高橋尚子「勝負の分かれ目」<前編>

 女子マラソンは、五輪での上位入賞が期待される種目のひとつです。かつてはバルセロナ五輪の有森裕子選手(銀)からアテネ五輪の野口みずき選手(金)まで4大会連続でメダルを獲得。女子マラソンは日本のお家芸とも呼ばれていました。しかし、前回の北京五輪では中村友梨香選手の13位が最高。連続メダルの襷は途切れてしまいました。ロンドンでは重友梨佐、木崎良子、尾崎好美の3選手が日本勢2大会ぶりのメダルへ、8月5日のレースに臨みます。今回は、日本女子陸上界で初の金メダルに輝いた高橋尚子選手のシドニー五輪での快走を、12年前の原稿より紹介します。

第498回 小久保、快挙の陰に好敵手あり!

 40歳8カ月での通算2000本安打達成は宮本慎也(東京ヤクルト)の41歳5カ月、落合博満の41歳4カ月に次ぐ、“高齢記録”だそうだ。  福岡ソフトバンクの小久保裕紀がさる6月24日、北海道日本ハムのブライアン・ウルフからセンター前ヒットを放ち、史上41人目の快挙を成し遂げた。

第544回 70歳 難病と闘うアリの心中は

 右手の人さし指で鼻を押しつぶし、左手で耳をねじる。そして、しわがれ声で話す。「フレイジャーが番組に出たら(こんな感じだ)」。次の瞬間、スタジオは嘲笑に包まれた。  番組の主役はムハマド・アリ。対戦相手のジョー・フレイジャーを揶揄しているのだ。アリの挑発は続く。「(フレイジャーは)リズム感もフットワークもなく、まともに話もできない。歌がうまいなんてウソだろ」

第497回 花開いた独立リーグの星 千葉ロッテ・角中勝也外野手

 苦労人の活躍を見るのはうれしいものだ。大きな背番号を見ると、つい応援したくなる。  角中勝也、背番号61。千葉ロッテの外野手。現在、ブレーク中の25歳である。  交流戦では打率3割4分9厘で首位打者に輝いた。レギュラーシーズンの打率も目下、3割3分(6月28日現在)。27日には規定打席に達し、田中賢介(北海道日本ハム)と首位打者争いを演じている。

☆五輪特別編☆勝利を呼び込んだ鈴木大地の決断

 ロンドン五輪まで、いよいよ1カ月を切りました。日本のメダルラッシュが期待される競泳は28日から男子400メートル個人メドレー予選を皮切りに競技がスタートします。前人未到の3大会連続2冠を目指す平泳ぎの北島康介選手、北京の雪辱を狙う背泳ぎの入江稜介選手などに金メダルへの期待が高まっています。今回は、日本の五輪競泳史上に残る名場面、ソウル五輪男子100メートル背泳ぎでの鈴木大地さんのレースを、振り返ります。

第543回 「夢の球宴」、野村克也が背負っていた名誉

 オールスターゲームのことをメジャーリーグでは「ミッドサマー・クラシック」(真夏の祭典)と呼ぶ。ピッツバーグとアーリントンで2度ほど取材したことがあるが、その盛り上がりぶりは「フォール・クラシック」(秋の祭典)と呼ばれるワールドシリーズに勝るとも劣らないものがあった。

第542回 「力士ムラ」の名跡管理に不安あり

 困ったことにかくして「原子力ムラ」の利権は守られましたというオチになるのだろうか。この9月までに原子力の安全規制を担当する新組織が誕生する。原子力規制委員会と事務局の原子力規制庁だ。独立性が高く、原発推進側に著しくシフトしていたこれまでの組織とは違うと聞いていたが、これから選定する規制委の5人のメンバーについては明らかになっていない。つまり人選によっては原発の監視役を担う機関として中立性、公平性が揺らぐリスクも生じるわけで、国民のひとりとして非常に心配である。

☆五輪特別編☆「神」のいるコート

 バスケットボールの女子日本代表は、ロンドン五輪出場を懸け、25日からトルコで開催される五輪世界最終予選に臨みます。予選は12カ国が参加し、上位5チームが出場権を確保します。2大会ぶりの五輪出場を目指す日本代表を牽引するのはエースの大神雄子選手です。彼女は、2004年のアテネ五輪に出場し、その後は女子最高峰リーグのWNBAでもプレーもしました。今年3月に右足の手術を受けた影響が心配されましたが、現在は全体練習に復帰し、キャプテン、そして司令塔としてコート内外での活躍が期待されます。今回は、大神選手を取材した3年前の原稿を紹介します。

第541回 マンU合意・香川は夢の劇場で何を思うか

 スティーブ・エヴェッツ演じるエリック・ビショップはマンチェスター市内に暮らす梲(うだつ)が上がらない中年の郵便配達員だ。2度の結婚はいずれも破綻。連れ子は非行に走った。仕事にも精彩を欠き、抜け殻のような日々。部屋の壁に貼った自らのアイドル――等身大の“エリック・ザ・キング・カントナ”のポスターが唯一の心の拠り所だ。そう、彼はマンチェスター・ユナイテッドの熱狂的サポーターなのだ。

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