望郷のターフ 御神本訓史

 騎手わずか9人という、日本一小さな競馬場が昨年の夏、55年の歴史に幕を閉じた。  島根県、益田市営競馬場。  最終日となった8月18日には、1日としては過去最高の4621人が入場し、馬券の売り上げ高も6231万円を記録した。 「子供の頃から大好きで、憧れを抱いて入った場所だけに、そりゃ寂しかったですよ」

第364回 スポーツも名所旧跡に劣らぬ文化財

 最初に断っておくが、名所旧跡はできるだけ大切に保護しなければならないと私は考えている。しかし、果たして土地は死者だけのものなのか。生者にモノを言う権利はないのか。敢えて挑発的な物言いをしたのは名所旧跡を前にするとスポーツはあまりにも無力だからである。

第316回 不出世のスラッガー・王貞治の極意を球界に有効活用せよ!

 NHKが先頃放送した「プロ魂〜王監督のメッセージ」という番組は、本人自らの言葉や関係者の証言を通して王貞治という人物の内面に迫る、見応えのある番組だった。  巨人V9時代の同僚で、王より6つ年上の国松彰がこんな証言をしていた。

第363回 楽天・内村は“野村イズムの申し子”

「どんな人間にも、一生に一度、必ずチャンスが訪れる」。それが東北楽天・野村克也監督の口ぐせである。「問題はそれをモノにできるかどうか…」  これは自身の経験からくるものなのだろう。南海入団後2年間、野村は1軍のゲームにはほとんど出場することができず、戦力外通告を受けたこともある。ところが3年目のオープン戦でチャンスを掴む。主戦捕手の松井淳が肩痛を理由に試合を欠場。代役として出場した野村は攻守に溌剌としたプレーを見せ、レギュラーの座を奪い取ってみせたのである。「だから、たとえオープン戦であろうとも僕はケガをしても絶対に休まなかった。今度は逆の立場になるんですから。その危機感だけでやっていたようなもんですよ」

アヤックスの機能美が破綻するとき。<後編>

 後半に入っても、ピッチの風景は変わらない。アヤックスが7割近くボールを支配し、グラウンダーで短いパスを素早くつないでグレミオDF陣をペナルティエリア内に封じ込める。時折、ハーフコートマッチの様相を呈するワンサイドの攻め。しかし、アジウソンを司令塔とするグレミオの堅牢は崩れない。

第362回 プロレス中継消滅に想う

 テレビの歴史は、そのままプロレスの歴史でもある。そしてプロレスといえば力道山だ。あの長嶋茂雄がプロ入りの際のインタビューで「憧れの人は力道山」と答えたのは有名な話。空手チョップを振るって観衆を鼓舞する姿に感銘を受けたというのだ。  1954年2月、蔵前国技館で行なわれたシャープ兄弟との対決には、力道山見たさに2万人の観衆が新橋駅前の広場に詰め掛けた。街頭テレビを観るためだ。国民の多くは力道山を通してテレビという“文明の利器”を知ったのである。

第315回 「記憶」を残した男が韓国で伝える勝負勘 三星ライオンズコーチ・長嶋清幸氏

 韓国の三星ライオンズが2009シーズン、前中日作戦兼外野守備走塁コーチの長嶋清幸を打撃コーチとして迎えることになった。  三星はこの3年間、打撃不振に悩まされてきた。06年は2年連続で韓国王者になったにもかかわらず、チーム打率は2割5分5厘と低迷した。

第361回 プロ野球女子選手の起用は慎重を期すべき

「男女共同参画社会基本法」が制定されたのは平成11年6月のことだ。その骨子として男女は「社会の対等な構成員」として「自らの意思によって社会のあらゆる分野における活動に参画する機会が確保」されなければならない、とうたわれている。附帯決議ではDVに対しても喫緊の課題として取り上げられ「あらゆる形態の女性に対する暴力の根絶に向けて積極的に取り組むこと」との一文が盛られている。

第314回 渡辺監督・名将の風格

 日本シリーズ最終戦、スタメン9選手の年俸総額は巨人17億250万円、埼玉西武5億5500万円(いずれも推定)。西武は巨人のおよそ3分の1。巨人・李承の年俸が6億円だから、彼ひとりの年俸で西武のスタメン9人が雇える計算になる。  しかも勝ったのは西武だった。就任1年目の渡辺久信監督の采配が節目節目で的中した。最終戦、同点のホームを踏んだ片岡易之は死球で出るなる2盗を決め、中島裕之のボテボテの3塁ゴロの間にホームベースを駆け抜けた。  試合後、殊勲の片岡は「このシリーズ、待てのサインは一度もなかった」と語った。

アヤックスの機能美が破綻するとき。<前編>

 フットボールはチェスに似ている。いや、チェスはフットボールに似ている、といった方が正しいかもしれない。  父親が子供にチェスを教える時、最初にいう言葉はいつも決まっている。 「あらゆる局面で数的優位をつくれ」  モダンチェスの現場において、いきなり敵陣深く攻め入り、クイーンやキングを追い詰めるという戦術は存在せず、地道に8個のポーンを収集にかかる。  この前線の二等兵をいかに攻め落とすかが前哨戦のカギであり、敵陣をカタストロフに陥れ、キングの首をはねるシナリオの断片をそこに見出すことは難しい。

第313回 寄らば……でなく打倒大樹で「筋を通す男」 横浜・三浦大輔投手

 関西のスポーツ紙は勝とうが負けようが、雨が降ろうが雪が降ろうが、一面は阪神ネタと相場が決まっている。  と言えば少々オーバーかもしれないが、少なくとも東京のスポーツ紙が一面に巨人ネタを持ってくる割合と比較すると、これはもう倍以上の差があるのではないか。

第312回 日本球界に求められるアジアでの役割

 日本シリーズ終了直後に行なわれるアジアシリーズは、どことなく“付け足し”のイメージがある。メディアの扱いもWBCや日本シリーズに比べれば、格段に小さい。日本、韓国、台湾、中国のチャンピオンが集まり、アジアナンバーワンのチームを決める大会であるにもかかわらず……。

第358回 WBC代表入りのガイドラインを作るべき

 少々、意地悪な物の見方をしてみる。仮にWBC東京ラウンドの主催者が読売新聞社ではなく中日新聞社だったとする。果たして中日の候補選手5人全員が代表入りを辞退するなんてことがありえただろうか。今回の中日の“集団ボイコット”に球団エゴの匂いが消えないのは、そんな背景が見え隠れするからだ。

第357回 円高はJリーグが存在感示す好機

「いくらチャンピオンズリーグとはいえ3階席で37ポンドだよ。日本円で約6000円(当時)。これじゃフットボールは“庶民のスポーツ”とは言えないな」。過日、川淵三郎氏と会食する機会があった。この10月、オールド・トラフォードでマンチェスター・ユナイテッド対セルティック戦を観戦した時の話。日本人観光客にチケットの値段を聞いたところ、先の答えが返ってきたという。プレミアリーグの入場料は平均8000円。高騰する年俸が入場料にはね返る。

森・西武野球は何を残したか<後編>

 92、93年と2年連続で日本シリーズを戦った森祇晶と野村克也。イメージで語れば前者が「勝負の鬼」であるのに対し、後者は「野球の鬼」である。将棋の世界でいえば、大山康晴名人と升田幸三名人の関係に似ている。「勝負の鬼と将棋の鬼が戦ったら、最終的に勝負の鬼が勝つ」。米長邦雄名人のセリフである。今回、紙一重の差で「野球の鬼」が「勝負の鬼」に勝ったが、2人のイメージが入れかわったとは思わない。

第309回 いま再び「野茂教室」が日本球界を変える オリックス臨時コーチ・野茂英雄氏

 今年7月、現役引退を表明した野茂英雄が、11月12日から3日間限定でオリックスの臨時投手コーチを引き受けることになった。  野茂に臨時コーチを依頼したのは近鉄時代の先輩である大石大二郎監督。野茂は今でも近鉄時代の元チームメイトたちと良好な関係を保っている。

第354回 残念だった“非公開”WBC監督人事

「後医は前医を批判せず」。医療の世界にはこんな不文律がある。元々は貝原益軒の「たとえ誤るとも、前医をそしるべからず」という言葉に端を発している。  良心的に解釈すれば病状は日々刻々、変化する。医師はその場その場で全力を尽くしているのだから、後で診た者がああだこうだと治療法の是非を論じるのはアンフェアだということなのだろう。かつてはこの姿勢を貫くことこそが医師の美徳とされてきた。

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