第133回「輝き続けるもの」

「自分の身体がいつまでも自由に動く」と思っているのは、若い間だけ。加齢とともに、いろいろと不具合が出てきて現実を思い知るのは人類皆同じである。何の痛みも、何の制限もなく動けて、食べられることがどんなに幸せかというのは、それを失いかけて、もしくは失ってから気付くものだ。

第132回「お台場はスポーツアイランドになるべきか?」

 連休最中の9月16日、普段は家族連れなどで賑わうお台場のビーチがウエットスーツ姿の人で溢れかえっていた、通常は遊泳禁止となっているこのビーチで開催される「東京アクアスロン2012」の参加者たちだ。「アクアスロン」とは、水泳とランニングの複合競技の名称で、これに自転車が加わると3つで「トライ」、そう「トライアスロン」となるわけだ。なので、アクアスロンの参加者もトライアスロン愛好者や、トライアスロン参加の準備段階という方が多い。休日のお台場がその参加者たちのエネルギーに溢れていた。

第131回「上手く負ける難しさ」

 今年も4年に一度の熱い夏が終わった。僕のようなスポーツジャンキーはもちろんだが、普段はスポーツに興味をもたない人でも、この時ばかりは眠い目をこすって見る機会を設けるのが素晴らしい。どんな作りものより、人間が真剣に取り組む姿、そして人類の頂点を目指す姿に心を奪われるのだろう。これはスポーツでなくともできるものではあるが、やはりスポーツはそれが最も分かりやすい形で見せてくれるものであり、スポーツの持つ力を再認識した夏でもあった。

第130回「フランスで見る夏の夢」

 ヨーロッパで人々を熱狂させるサッカー。この夏も欧州選手権(EURO)で皆が盛り上がった。もちろんオリンピックも盛り上がるが、4年に1度の祭典ならワールドカップの方が、人々を熱狂させるのも事実である。どこまで行ってもヨーロッパにおいては、やはり「サッカー」なのである。そんなヨーロッパにおいても、毎年開催されるスポーツイベントとして、もっとも盛り上がるのは「ツール・ド・フランス」である。3週間もの間、フランスを中心に総距離約4000?を連日走り続けるサイクルロードレースだ。かけている予算も、集まる観客も、他のスポーツイベントと比較すると群を抜いて多く、バカンスシーズンに入ったヨーロッパ中の注目を集める。またヨーロッパだけでなく、約190カ国、100チャンネルを超える放送局で放映されているというから驚きだ。

第129回「常滑市の熱い1日」

 日本最大規模のトライアスロン大会「アイアンマン70.3 セントレア常滑Japan」が6月24日に開催される。約1700人の参加者が、スイム1.9?、バイク(自転車)90.1?、ラン21.1km に挑むのだ。トップ選手でもフィニッシュタイムは4時間。制限時間8時間の長い戦いで、愛知県常滑市がトライアスロン一色に染まる。

第128回「NYでの3万人の自転車イベント」

 今や世界の常識と言える「都市マラソン」。名だたる都市には必ずマラソン大会がある。ロンドン、ボストン、ニューヨーク(NY)、パリ、ベルリン……数えだしたらきりがない。それは国内でも同様で東京はもちろん、この数年で大阪、神戸、京都と増えてきた。まるで、マラソン開催が、文化的な都市としての証明であるかのようだ。まあ、ランナーとしては嬉しい限りだが。  一方、同じように世界的にも愛好者が多い自転車はそうもいかないようで、都会で大きな自転車イベントが開催されている例はあまりない。知る限りではヨハネスブルグの「Momentum 94.7 Cycle Challenge」とNYの「Five Boro Bike Tour」くらいだ。しかし、どちらも3万人という参加者を集めるビッグイベントで規模の大きさが半端ではない。ランナーでも3万人となると、コントロールが大変なのは東京マラソンを見た方ならお判りだろう。それを自転車でやるわけだから想像もつかない。そのNYの「Five Boro」に今年初参加をできることになり、自転車好きとしてはもちろんだが、イベント関係に携わる者として興味津々で走ってきた。

第127回「信念の男〜アドベンチャーレーサー・田中正人〜」

「とうとうやってしまったか」。私の最初の正直な感想はそんな感じだった。  約20年間向き合い上り詰めた。本当にここまで追求したのだと思うと、この男に対して素直に尊敬するしかない。  彼の名は田中正人。日本で最も経験豊富な数少ないプロのアドベンチャーレーサーである。  1993年からこのスポーツを始め、とうとう今年の2月にチリで開催された「PATAGONIAN EXPEDITION RACE」で2位に入るという快挙を成し遂げたのである。「世界と戦えるレーサーになる」と言い続けて苦節18年。本当に世界のトップレーサーの仲間入りを果たしたのだ。

第126回「福士加代子の挑戦は続く」

 2月末、私は「東京マラソンEXPO」でのトークショーを前に少々緊張していた。マラソンや自転車界では多くの方とこのような舞台に立ってきたのだから、それほど緊張することはないのだが、今回はちょっと勝手が違ったのだ。この日のお相手は福士加代子選手。彼女にとっては、失速して9位に終わった1月の大阪国際女子マラソン以来、初めての公の場なのだ。どのくらいのトーンで、どの程度の話までしていいのか……。しかし、控室に入ってきた彼女は予想以上に明るい声で「あっ、なんでもOKっすよ。だって隠すことないもん!」とあっけらかん。いつもの福士選手が戻っているのに拍子抜けした。

第125回「ビーチでシクロクロス!?」

「シクロクロス」。この名前を聞いてもすぐにイメージできる人は僅かだろう。ツールドフランスに代表されるサイクルロードレース、山の中など不整地を走り回るマウンテンバイク(MTB)。この2つを掛け合わせたサイクルスポーツがシクロクロスということになる。ロードのスピード感とMTBの技術や走破性が必要なスポーツで、国内でも30年以上の歴史を誇る。しかし競技人口は極端に少なく数千人。ロードの100万人超、MTBの数十万人という単位からみるとかなり少ない。まだまだ国内では相当なマイナー競技なのだ。そのシクロクロスが、なんと東京有数の観光地であるお台場のビーチにやって来た!

第124回「箱根駅伝はなぜ倒れこむ?」

 すっかり日本のお正月の風物詩になった「駅伝」。元日は全日本実業団対抗駅伝を見て、2、3日に箱根駅伝を見たら正月も終わったなぁと、実感するパターンが続いているというのは僕だけではないだろう。中でも箱根駅伝の注目度は特別で、毎年驚くべき視聴率。2日の往路が27.9%、3日の復路が28.5%と、多チャンネル時代において他局が羨む数字で、もちろんお正月番組の中では断トツのトップである。日本テレビの入念な取材もあり、ついつい引き込まれてしまうという人も多いのではないだろうか。

第123回「向かい風のホノルルマラソンの可能性」 

 12月11日、今年もホノルルマラソンが、約1万2000人の日本人を含む約2万3000人を集めて開催された。震災の影響もあり、日本人参加者の減少が心配されたのだが、結果的には昨年比10%に満たないダウンに留まり、この大会の根強い人気を印象付けた。

第122回「猫ひろしの挑戦は売名行為か?」

 16日、インドネシアのパレンバンで開催された東南アジア競技大会。日本人には縁遠い、普段ならまず報道されない大会だ。しかし、今年はワイドショーにまで登場した。きっと今回初めてこの大会名を聞いた人も多いだろう。その理由はもちろんマラソン種目に出場する「猫ひろし」。オリンピック出場の為に、国籍をカンボジアに変えての出場だ。カンボジアの今季国内記録である2時間31分58秒を目指したが、その記録を上回ることはできなかった。それでも2時間37分39秒の自己記録更新。今大会での代表内定はならなかったが、ライバル選手の今後の結果次第では代表入りの可能性を残し、わずかに望みをつないでいる。

第121回「走る“芸術品”マホガニーバイク」

「200万円ですか?」と、さすがの僕も聞き直してしまった。  場所は自転車の展示会、仕事を終えて何気なく会場を歩いていると、目に留まった木製のバイク。マホガニーバイクだ。カーボンやチタンがスポーツバイクの中心というご時世で、木目の綺麗なバイクは明らかに他とは違った魅力を醸し出していた。思わずじっくりと見て、触って……何気なく聞いた値段の答えがそれだったのだ。もちろん高級車であることは理解できるし、100万円前後のバイクはどこのメーカーにでもある。しかし、200万円とは〜。数々のバイクを見てきた私も正直想像できなかった価格だった。

第120回「土井雪広が切り開く道」

 近年、日本人の躍進が目覚ましいサイクルロードレース界。ここでまたひとつ新しい快挙が生まれた。オランダのチーム「スキルシマノ」に所属する土井雪広選手が、日本人として初めてスペイン一周レース「ブエルタ・ア・エスパーニャ」に出場、そして完走を果たしたのである。

第118回「なでしこはブーム!?」

 日本中を元気にしてくれた「なでしこJAPAN」。震災後、いいニュースが少ない日本国内に、本当に嬉しい明るい話題だった。普段はサッカーのことなど語らない、いや興味がない主婦までもが「なでしこ」の言葉を語るのは、いかにこのニュースが皆を惹きつけたかを物語っている。しかし、一部スポーツ関係者の間では「この光景どこかで見たよね……」と心配する声が。そう、北京オリンピック後のソフトボールである。あの時はワイドショーまでもが、ソフトボールを語り、選手の生い立ちや、家族をフィーチャーしていた。しかしあれから3年、いまやソフトボールを見る人、語る人はどれだけいるのだろう……。そして今の女子サッカーは、「まさにあの現象と同じ」と心配する声も一部では上がっている。

第117回「古田敦也の挑戦」

 あの古田敦也がトライアスロンにはまっている。  ゴールデングラブ賞10回、ベストナイン9回。「ミスタースワローズ」と呼ばれた球界を代表するインテリジェンスな彼が体力の限界に挑戦しているのだ。瞬発力とスキルを必要とされる野球、持久力とタフな精神力を要求されるトライアスロン。同じスポーツでも真逆に位置するスポーツをまたぐのは珍しい。

第116回「悲しみを越えて」

 イタリアを1周する自転車レース「ジロ・デ・イタリア」。フランス1周の「ツール・ド・フランス」、スペイン1周の「ブエルタ・ア・エスパーニャ」と並んで「グランツール」と呼ばれる世界の三大ステージレースだ。100年以上の歴史を誇る世界的なレースで、5月9日の第3ステージで悲しい事故が起こった。タイトなコーナーを下っている最中に、ワウテル・ウェイラント(ベルギー)選手が転倒、前頭部を強打し、還らぬ人となったのだ。ジロ102年の歴史上では4人目、グランツールでみるならば1995年のファビオ・カサルテッリ(イタリア)選手以来のレース中の死亡事故ということになる。

第114回「スポーツはなにをすべきか?」

 3月11日に起きた東日本大地震における被害の大きさは計り知れない。この原稿を書いている被災4日目の14日においても被害状況がめまぐるしく変わっているありさまだ。大地震や大津波は以前から恐れられていたが、我々の技術や研究の積み重ねで克服したつもりになっていたのかもしれない……。あらためて自然の力の恐ろしさを知らされる。

第113回「自転車はどこを走るのか」

 来たる3月12日(土)に都内最大のサイクリングイベント「Tokyo センチュリーライド葛西2011」が開催される。そのプレイベントとして、江戸川区で「自転車+健康+環境」というシンポジウムが2月5日に行われた。「せっかく自転車イベントやるなら、この機会に自転車と社会との共存を考える機会を持ちたい」という主催者の思いで開催。本大会の監修を務める私がパネリスト兼進行役だったのだが、このイベントはいろいろと考えさせられる絶好の機会となった。

第112回「長谷川理恵の挑戦!」

 ランニング女子のロールモデルといえば長谷川理恵。モデルとしての活動の傍らフルマラソンを3時間15分で走ってしまう格好の良さは、走る女性たちの憧れであり、スポーツ芸能人の象徴でもある。その彼女が今年掲げた目標はホノルルトライアスロン。スイム1500m、自転車40km、ランニング10kmを走り抜けるオリンピックディスタンスのトライアスロンだ。

第111回「全員が主役のホノルルマラソン」

 国内のマラソンブームが続く中、元祖「初心者参加型マラソン」であるホノルルマラソンが今年も12月12日に好天の中で開催され、2万3千人の参加者で盛り上がった。私もいつものようにJALPAKツアーのコーチとして、ツアー参加者のお手伝いをしに行ってきた。いろんな方がいらっしゃるのだが、驚くべきは昨年89歳で参加された後藤さん。今年も90歳で参加し、見事に9時間台で完走された。

第110回「ロタブルーの裏側に」

 グアムとサイパンの間にある小さな島「ロタ」。名前は知られていても、行ったことのある人が意外に少ない島だ。そのマリアナ諸島の小島で、17年間も日本人の手によってトライアスロンが開催されている。一部のファンには圧倒的な人気を誇るロタトライアスロンだが、なぜここでトライアスロンなのか、なぜ日本人なのか。初めて聞いた人は誰しも不思議に思う。そのカギを握るのは大西喜代一氏。この人こそがこの地にトライアスロンを伝えた伝道師なのである。

第109回「人が生み出すアイアンマン」

 9月19日、愛知県常滑市。人口5万人の街に日本で初めて「アイアンマン70.3」がやってきた。世界で40戦を越える「アイアンマン70.3シリーズ」が、ようやく日本で開催された記念すべき日である。しかし、開催するまでの道は平らではなく、いろんな人のつながりと幸運が重なり、この短期間で出来たのは奇跡に近いのかもしれない。

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