上田哲之

甲子園に愛された選手

 たまたまつけたテレビのチャンネルが「リトルリーグ世界大会」の中継に合っていた。見るともなく見ていると、日本代表のやや小太りのエースが、ひとりだけ抜きん出て速いボールを投げる。ほうー、すごいじゃないのと思っていたら、こんどは打席に入って、特大のホームラン。これは、飛距離94メートルの大会史上最長アーチと報道された。

柳田悠岐と秋山翔吾――強打者とは何か

 セ・パ交流戦が終わると、必ず言われることがある。「セ・リーグよりパ・リーグのほうが強い」。今年の成績を見ても、交流戦の順位は1位から5位までパ・リーグ勢が並んでいるし、戦績はパ61勝、セ44勝、3分け。まぁ、そういう声があがるのも、自然なことでしょう。

「彼の不在」について 〜日米球界の超越的才能〜

 この国には、朝の野球と夜の野球がある。草野球の話じゃありませんよ。テレビ中継の話。朝とは、主として午前中に放映されるメジャーリーグ。夜とはもちろん、日本のプロ野球ナイトゲームである(3〜4月と8月には、これに昼の野球、すなわち高校野球が加わって、たいそう忙しくなるのだが……)。

打撃する欲望――中村剛也から福田永将へ

「ていうかテラスだと恥ずかしいじゃないですか」  と埼玉西武の中村剛也は言ったそうだ(「日刊スポーツ」4月26日付)。4月25日、福岡ソフトバンク−西武戦の試合後のことである。  6回表、ソフトバンクの攝津正のカーブをとらえた打球は、ヤフオクドームの左中間スタンドに飛び込む6号ホームランとなった。

「綺想」の系譜――黒田博樹と高橋純平

 黒田博樹(広島)の復帰後、公式戦初登板は3月29日の東京ヤクルト戦だった。  7回を5安打無失点で切り抜け、今季初勝利をあげた。試合後のヒーローインタビューでとびだした、 「広島のマウンドは最高でした」  という言葉も、名言居士のこの人らしいセリフだった。

決断と注目のとき――黒田とイチロー、大谷と岡本……

 前回、黒田博樹(広島)には文書ではなく、会見の形で広島復帰を語ってほしかった、と書いた。なぜなら、そうすれば、記憶に残る名言が聞けるに違いないから、と。あの時点で発表されていた文書の形では、黒田が一人で考え抜いた、いわば思考の現場とでもいうべきものが感じとれないではないか。と思っていたら、やってくれました。1月15日(現地時間)、自主トレを行っている米ロサンゼルス近郊で自ら口を開いた。果たして、それは名言というにふさわしい内容だった。

黒田博樹という生き方

 この年末年始の日本球界最大の話題といえば、やはり、黒田博樹の広島カープ復帰ということになるのだろう。なにしろ、まだ年末なのに、知人から「おめでとうございます」という連絡が来る。何のことかと思えば、黒田復帰である。年が明けると、「今年1年に限り、カープファンをやらせていただきます」という挨拶も数人にいただいた。それくらい、カープファン以外の多くの野球ファンにも衝撃を与えたニュースなのだろう。

2014年、日本野球の10大事件

<生れきて十八年のわれのこのきほこりを高くかかぐる  田部君子>  最近、お気に入りの歌である(池内紀さんの新著『戦争よりも本がいい』講談社「田部君子歌集」の項より孫引き)。これが、1933年(昭和8年)、当時、満17歳の女性歌人の作と聞いて、二度驚く。なんというか、まっすぐで心地よい。

常識の罠――広島カープとヤンキースの試合から

 確かにセ・リーグもパ・リーグも、ペナントレースの最後の最後まで面白い展開だった。パ・リーグは福岡ソフトバンクが今季最終戦でオリックスをくだして優勝を飾った。ソフトバンク対オリックスは、正真正銘のペナント争いだったが、セ・リーグの広島、阪神は、2位争いである。クライマックスシリーズ・ファーストステージをどちらが本拠地で開催できるか、という争いだ。それも広島が5日の最終戦に勝つか引き分ければ広島、負ければ阪神が甲子園で開催できる、というところまでもつれた。現行のクライマックスシリーズという制度ならではの盛り上がりである。ただねぇ、結果的にそうなったのであって、今のプレーオフのシステムがベストだとは、とうてい思えないのだが。

DeNA・中畑監督と東海大四・西嶋投手を結んでみる

 それが自分の生き方なので、としか言いようがないが、茫然と野球を眺めている。  今日もまた、ニューヨーク・ヤンキースのジョー・ジラルディ監督が、ベンチを出てトコトコ小走りに審判の元へ向かう。「チャレンジ」を要求するのである。メジャーリーグが今季から取り入れたビデオ判定のシステム。

吉田(東海大相模)のスライダー、和田(カブス)のストレート

 1年前、彼のことをどう書いたのだったかな。気になって当欄のバックナンバーを調べてみた。 <ストレートは144〜145キロ。スライダーが鋭い。(中略)2年後にドラフトにかかっても不思議はない>  彼とは東海大相模の右腕・吉田凌である。1年生だった昨夏は、神奈川県大会準決勝の横浜戦で先発。好投したが6回に横浜打線につかまり涙をのんだ。2年生になって迎えた今夏、東海大相模は再び準決勝で横浜と対戦し、リベンジを果たす。吉田は、向上との決勝戦に先発して8回2/3をゼロ封、3安打、20奪三振のド派手な快投を見せた。今夏の甲子園(全国高校野球選手権大会)の主役のひとりに躍り出たと言っていい。

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