杉浦大介
「あと1戦を挟んで世界タイトルに挑戦させる」 戦いを終えたばかりのチャーリー太田の隣に立ったルー・ディベラ・プロモーターは、リング上でのテレビインタヴューで力強くそう答えた。
「胸を張ってくれと選手たちに伝えた。敗北を恥じる必要はないとね。今季中にも私たちは多くを成し遂げ、私もその一部となれたことを誇りに思っている」 10月30日にボストンで行なわれたワールドシリーズ第6戦後、カージナルスのマイク・マシーニー監督は会見場でそう絞り出した。
【スリーピートの可能性】 「入団したときに思い描いた青写真がすべて現実のものとなった。苦しいこと、良いことを通じて成長し、2年連続で王座にたどりつけた。こんな素晴らしいチームの一員になれて幸せだよ」 昨季のファイナルで2連覇を達成した直後、レブロン・ジェームス(マイアミ・ヒート)の感慨のこもったコメントが思い出深い。シンプルな内容だが、最終決戦ではサンアントニオ・スパーズに敗北寸前まで追い詰められた後だっただけに、より実感がこもって感じられたのだ。
本命不在――。今週から始まった2013年MLBプレーオフは、そんな風に形容されることが多い。だからといって低レベルなわけではなく、戦力はむしろ高い次元で拮抗していると言ってよいのではないか。 地区シリーズに残った全8チームがシーズン中は92〜97勝の勝ち星を挙げ、特にアメリカン・リーグの4チームはどこがワールドシリーズに進んでも不思議ではない底力を秘めている。その中で、ときには運も味方につけて勝ち進み、「運命のチーム(the team of destiny)」と呼ばれるようになるのはどこか?
5階級制覇王者フロイド・メイウェザーの輝かしいキャリアの中でも、最高傑作のひとつに数えられる見事なパフォーマンスだった。 9月14日、ラスベガス――。“近年最大のファイト”と称されたメイウェザー対サウル・“カネロ”アルバレスのWBA、WBC世界スーパーウェルター級統一戦だったが、盛り上がりを見せたのは試合前までだった。
「それにしてもヤンキースはよくこの位置にいるなぁ……」 2013年も9月を迎える頃、そんな声がメディアの間からよく聞かれるようになった。9月5日からの大事なレッドソックスとの4連戦を迎えた時点で、ワイルドカード圏内まで2.5ゲーム差。ここまでの波瀾万丈の道のりを思い返してみれば、現時点でプレーオフ進出が不可能ではない位置にいることは、確かに軽いミラクルにも思えてくる。
昨年12月8日、場所はラスベガスのMGMグランドガーデン。マニー・パッキャオがファン・マヌエル・マルケスから浴びた右カウンターは、近年のボクシング界で最も衝撃的なKOパンチとして記憶されていくことになるだろう。 マルケスがパッキャオをキャンバスに送り込んだ6ラウンドの一撃で、さまざまなものが失われた。1999年以降は1度もKO負けがなかったパッキャオの不倒記録、フロイド・メイウェザーとのメガファイトが近未来に実現する可能性、そして、フィリピンの英雄がまとっていた不可侵のオーラ……。半ばフィクションじみた快進撃を続けていた現代の怪物ボクサーはついに轟沈し、私たちボクシングファンも現実の世界に引き戻されることになった。
「ニヒト・アラカワは地球上で最も勇敢な男かもしれない!」 オマー・フィゲロア対荒川仁人戦を中継した「Showtime」の実況担当は、激闘の興奮から試合中に思わずそうまくし立てた。 アナウンサーがときにオーバーに語り過ぎるのは、どの国でも同じ。しかし、7月27日に行なわれたWBC世界ライト級暫定王座決定戦を目の当たりにしたファンは、誇大表現にもそれほど違和感は抱かなかったかもしれない。
ニューヨークで行なわれた今年のオールスターも無事に終了し、MLBは19日から後半戦に突入している。 熾烈なプレーオフの座席争いをはじめとして話題豊富な一方で耳を塞ぎたくなるような厄介な問題も存在する。在米メディアも大きなスペースを割いて伝え続けている“バイオジェネシス問題”である。
ニューヨークのシティ・フィールド(メッツの本拠地)で行なわれる今年のオールスターゲームまで、もうあと2週間――。今季前半戦では意外な選手の活躍、新星の台頭が相次ぎ、多くのファンを喜ばせるシーズンになっていると言って良い。そこで今回は前半戦のMVP、サイ・ヤング賞、新人王を独自に選定し、ここまでを振り返っていきたい。
「9月14日の対戦相手に“カネロ”アルバレスを選んだ。ファンの願いに応えるつもりだ。MGMグランドで試合を行なうよ」 5月29日の夜、無敗の5階級制覇王者フロイド・メイウェザーは自身のツイッター上で次戦についての報告を行った。その直後、情報は瞬く間にアメリカ中を飛び交い、ボクシングファンを騒然とさせることになった。
「僕がプレーするのは優勝を勝ち取るため。その目標にたどり着くためには、とても長い時間が必要で、ファイナル制覇はバスケットボール人生の中で達成するのが最も難しいことだった。いつでも成功できるわけではなく、(2007、11年のファイナルでは)2度も敗者の側にまわってしまった。今季、こうして再び勝負ができる立場に戻ってこれたことをうれしく思う」 “キング・ジェームス”との愛称を冠されてNBA入りしたレブロン・ジェームスにとっても、昨季、マイアミ・ヒートの一員として初優勝を飾るまでに9年もの長い時間が必要だった。そんな経験を経てきたからこそ、サンアントニオ・スパーズと対戦するファイナル開始前の言葉には余計に実感がこもっているように感じられたのだろう。
かつてオリックス・バファローズでも指揮を執ったテリー・コリンズ監督が率いるメッツに、新たなエースが台頭して全米的な話題を呼んでいる。 新星の名は、マット・ハービー。昨季にデヴューした24歳の本格派右腕は、今季ここまで4勝0敗、防御率1.44と、ほぼ完璧な投球を続けてきた。193cm、102.1kgの恵まれた体格から投げ下ろす速球、スライダーは威力十分。5月7日のホワイトソックス戦では7回まで完全試合を続け、老舗「スポーツ・イラストレイテッド」誌でも表紙を飾った。
4月最後となった30日のアストロズ戦は、今季ここまでのヤンキースの足取りを象徴するかのようなゲームだった。 先発した黒田博樹は立ち上がりは制球に苦しみ、3回までに67球を投げる厳しい内容。毎回のように得点圏に走者を背負う投球を観る限り、長く辛い夜になってしまうかと思われた。
【注目の一戦はリゴンドーの完勝】 “スーパーバンタム級の頂上決戦”と評判を呼んで4月13日に行なわれたWBO世界同級王者ノニト・ドネア対WBA世界王者ギジェルモ・リゴンドーの一戦は、ふたを開けてみればリゴンドーの圧勝に終わった。 序盤にミドルレンジからカウンターを打ち込んで相手を警戒させ、中盤は足を使ったアウトボクシング。そして終盤11ラウンドから再びペースを上げたキューバ人は、最終ラウンド、右目が腫れて塞がりかけたドネアに容赦ない左を浴びせて試合を締めくくった。
【ダルビッシュは“エース”へと進化するのか】 2013年MLB最初の“マスターピース(絶品のパフォーマンス)”は、レンジャーズの開幕2戦目に先発したダルビッシュ有よりもたらされた。 4月2日のアストロズ戦で、ダルビッシュはなんと9回2死までパーフェクトを続ける快刀乱麻。最後の最後で無名選手にセンター前ヒットを許して大記録達成はならなかったものの、14三振を奪うほぼ完璧な投球で全米を騒然とさせた。
第3回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)もそろそろ佳境を迎え、現地時間3月15日には決勝トーナメントに進出する4チームが出揃う。 1組から日本、オランダが勝ち進んだのに続き、14日にはドミニカ共和国がアメリカ合衆国を下して準決勝進出決定。さらに15日にはアメリカ、プエルトリコが最後の椅子を争い、翌日には順位決定戦が行なわれる。
5月4日、ラスベガスMGMグランドガーデン・アリーナ WBC世界ウェルター級王座統一戦 王者 (43勝(26KO)0敗) vs. 暫定王者 (31勝(18KO)1敗1分) “現役最強ボクサー”の呼称を欲しいままにしてきた無敗の5階級制覇王者、フロイド・メイウェザーの次戦が正式決定した。 5月4日、場所はメイウェザーにとって本拠地と呼んでいいラスベガスのMGMグランドガーデンで、対戦相手は現WBC世界ウェルター級暫定王者ロバート・ゲレーロ。昨年5月にミゲール・コットに判定勝ちしてから、メイウェザーにとってちょうど1年ぶりのリング登場ということになる。
元日本スーパーウェルター級王者、現東洋太平洋同級王者のチャーリー太田にとって、約1年ぶりとなる故郷ニューヨークでの試合が決まった。 2月21日、マンハッタンのローズランド・ボールルームでチャーリーが迎え撃つのは、元アマのアラスカ王者アベル・ペリー。身長180cm、リーチ198cmという恵まれた体格のペリーは、アマ戦績84勝6敗と豊富な実績を誇る。しかし、34歳にしてプロ戦績は18勝(9KO)6敗ともうひとつで、すでに底を見せた選手であるのは確かだろう。
NBAの2012−13年シーズンも後半戦に突入――。すでに全30チームが41戦の折り返し地点を過ぎ、今季の勢力地図がうっすらと見えてきた感もある。 昨季王者マイアミ・ヒートは2連覇を果たすのか、MVP候補に名乗りを挙げるのは誰か、そして出遅れたロスアンジェルス・レイカーズとボストン・セルティックスはどんな方向に進んでいくのか……など、今回は後半戦の見どころを探っていきたい。
3階級制覇王者バーナード・ホプキンスにとって48度目の誕生日にあたる1月15日、その次なる挑戦が発表された。 通算52勝(32KO)5敗2分1無効試合のホプキンスは、3月9日にブルックリンで無敗のIBF世界ライトヘビー級王者タボリス・クラウド(24戦(19KO)無敗)に挑む。2011年に46歳4カ月で世界タイトル獲得を果たした老雄は、この試合に勝てば自らが持つ最年長王座奪取記録をさらに更新することにもなる。
12月19日にヤンキースと2年1300万ドル(約10億9000万円)で再契約し、イチローは今季もピンストライプのユニフォームを着て活躍することになった。 昨季は移籍後、水を得た魚のようだったヒット・マシーンの活躍に興奮した日本のファンはもちろん楽しみだろうし、イチローと相思相愛と言ってよい関係を築いた地元ニューヨークのファンも喜んでいるはずである。
12月8日にラスベガスで行なわれたマニー・パッキャオ対ファン・マヌエル・マルケスの第4戦は、戦前の予想を上回り、世界中のスポーツファンを釘付けにする死闘になった。 第3ラウンドにマルケスが右オーバーハンドでダウンを奪えば、第5ラウンドにはパッキャオが左でダウンを取り返す。最後は第6ラウンド終了間際にマルケスの右カウンターが炸裂し、激戦に終止符を打った。
これが4度目となったマニー・パッキャオ対ファン・マヌエル・マルケスのライバル対決を映画「スターウォーズ」に例えている記者がいたが、言い得て妙かもしれない。馴染みのキャラクターたちの最新作だけに、ファンなら結局は誰もが見たいとは思う。しかし、新鮮味自体は乏しい。
【HC交代、激動のシーズン開始 〜ロスアンジェルス・レイカーズ〜】 オフにドワイト・ハワード、スティーブ・ナッシュを獲得して今季最大の注目チームとなったレイカーズを、開幕直後に激震が襲った。最初の4戦で1勝4敗と出遅れたところで、チームはマイク・ブラウンHCを解任。攻守ともに歯車が噛み合っていなかったレイカーズは、後任にマイク・ダントーニHCを据えて再スタートを切ることになった。