第320回 サッカー日本代表の「戻るべき場所」

「自分たちには戻るべき場所があった」。ラグビー・トップリーグのMS杯を制したサントリー清宮克幸監督のコメントだ。「流れが悪くなったら、そこに戻るというゲームプラン。まずチャレンジする。うまくいかない。ならば戻ればいい。ラグビーは必然の競技。たまたまDFがズレたというのではなく、相手にとって“どうしようもないな”という状態をつくり出す。それをやり続ける。スクラム、モール、ラインアウト…。全てにおいて我々には“戻るべき場所”があったということです」

第319回 物価高でプロ野球は生き残れるか

 原油価格の高騰によりガソリンは昨年の同時期に比べ16.4%も値上がりした。4月からは輸入小麦の価格が30%引き上げられる。小麦が原料として使われているのはパンや麺だけではない。食品に加えビールなどもいっせいに小売価格に転嫁される。そうなれば、ますます家計は「生活防衛」の色を強め、レジャー関連支出を抑えるようになる。さてプロ野球は大丈夫か? と不安に思うのは私だけではあるまい。

第318回 大場よ、“鉄腕2世”を超えろ

「私の履歴書」といえば日本経済新聞の名物連載だが、川上哲治、西本幸雄、鶴岡一人(故人)、稲尾和久(故人)4氏の自伝を一冊にまとめるにあたり、解説を依頼された。「神様」に「闘将」に「親分」に「鉄腕」――。コピーライターなどいない時代、誰が名付けたか知らないが、どれも名ニックネームである。4氏の人物像が、この2文字に全て凝縮されているといっても過言ではない。

第317回 「三無主義」に蝕まれている相撲協会

 いつから、こんな詭弁がまかり通るようになったのか。「相撲の世界は各部屋が個人商店、協会が商工会議所のような関係。ひとつの部屋で不祥事が起きたからといって、いちいち理事長が責任を取る必要はない」。元力士やタレントから、しばしばこのような発言を耳にする。本当にそうだろうか。

第316回 Jリーグにアジア選手枠創設を!

 07年の世界主要企業の時価総額ランキング(野村証券調べ、日本経済新聞1月13日付)を見て驚いた。首位は前年6位の中国石油天然気(ペトロチャイナ)、2位エクソンモービル(米)、3位GE(米)、4位中国移動(チャイナモバイル)、5位中国工商銀行とベスト5のうち3社までが中国・香港勢によって占められていた。日本勢はトヨタ自動車の21位が最高である。

第315回 土俵を制するのは王者か覇者か

「王道」か「覇道」か――。東西両横綱の相星決戦となった初場所の千秋楽をテレビで観ていて、不意にそんなフレーズが脳裡をよぎった。  言うまでもなく「王道」は3場所連続優勝を果たした東の横綱・白鵬である。伝家の宝刀・左上手投げで西の横綱・朝青龍をひっくり返した瞬間、隣で観ていた知人が「正義が勝った!」と言って手を叩いて立ち上がった。何が正義で何が邪悪なのかは不明だが、一連の騒動を通じて知人は朝青龍に対し、嫌悪に近い感情を抱いたようだ。

第313回 ルーキー諸君「書を買おう、部屋に戻ろう」

「何の仕事でもそうですけど、就職が決まったら、まずそこの会社の社長が出している本を読むのが普通ですよね?」。そう水を向けると、古田敦也は即座にこう返した。「(プロ野球界は)普通じゃないんですよ(笑)。社会が違うんです。僕は試合に出たかった。そのためには監督の目指す野球を理解するしかなかったんです」

第311回 朝青龍は親方とともに座禅修行を

 モンゴルへ帰るのか、帰らないのか。横綱・朝青龍の年末帰国騒動は、高砂親方の説得もあり、どうやら「国内年越し」の線で落ち着きそうだ。  初場所は1月13日から始まる。その5日前には横審による稽古総見がある。約5カ月ものブランクを考えれば、正月返上で体づくりに励むのが筋だ。

第309回 生活の変化がもたらした国際大会の興奮

 ハラハラ、ドキドキ、ワクワク――。これがスポーツ中継が高視聴率をマークするための必要条件である。先の北京五輪野球アジア予選にはこの3つの要素が全て含まれていた。その結果が日本対韓国戦23.7%(関東地区)、28.9%(関西地区)、日本対台湾戦27.4%(関東地区)、33.3%(関西地区)――(「ビデオリサーチ」)。きょう負けてもあすがあるレギュラーシーズンでのゲームと違い、国際大会は基本的に「あすなき戦い」である。見る側も緊張を強いられる。日常生活では味わえない狂熱や絶望がそこにはある。

第305回 「伝説の日本シリーズ」16年目の告白

 世に「怪腕」や「剛腕」と呼ばれたピッチャーは数多(あまた)いるが、「鉄腕」とうたわれたのは、後にも先にも稲尾和久さんただひとりだ。  稲尾さんと最後にお会いしたのは今年2月。金沢市で行われた食のイベントでご一緒させてもらった。ひとつ頼みごとをした。開幕前の「北信越BCリーグ」に気になる投手がいた。

第303回 墓場まで持っていく「江夏の21球」秘話

「その話は墓場まで持っていこうと思っているんですよ」。真夏の広島市民球場の放送ブース。クールな表情が少しだけくもった。そこまで聞けばもう十分だった。それ以上、追及する気にはなれなかった。また追及したとしても何の意味もない。あえて言えばそれが勝負のあやというものだろう。

第301回 “裏技”では済まされない亀田家の蛮行

 雨上がりに大きな石をひっくり返すと、底にべっとりとヒルがこびりついていることがある。多くの観衆や視聴者はあんな気分を味わったのではないか。  もし、反則を指示する声を集音マイクが拾っていなかったら、亀田陣営の悪事は見過ごされていた可能性が高い。そうなれば、サミングや頭突き、抱え投げといった反則技も「闘志の表れ」(父・史郎氏)で処理されていたのである。

第300回 “ムラの村長”よ 責任を取れ

 新弟子の「リンチ死」疑惑の渦中にある前時津風親方(元小結・双津竜)の解雇理由は「相撲協会の信用、名誉を著しく失墜させた」というものだった。わかったようなわからないような説明だが、それを言うなら、北の湖理事長ら執行部の面々にも同様の処分が下されるべきではないか。新弟子の死因に疑念がもたれた時、協会あげて真相究明に乗り出していれば、文科省から指導を受けることもなかったし、世間からこれだけ批判を浴びることもなかっただろう。理事長以下執行部の不作為が「協会の信用、名誉を失墜させた」ことは明々白々である。

Back to TOP TOP