打撃する欲望――中村剛也から福田永将へ

「ていうかテラスだと恥ずかしいじゃないですか」  と埼玉西武の中村剛也は言ったそうだ(「日刊スポーツ」4月26日付)。4月25日、福岡ソフトバンク−西武戦の試合後のことである。  6回表、ソフトバンクの攝津正のカーブをとらえた打球は、ヤフオクドームの左中間スタンドに飛び込む6号ホームランとなった。

上田哲之「貧打の本質」

 たとえば昨年、丸佳浩の打撃が成長したとき、新井宏昌打撃コーチの功績が、よくとりあげられたものだ。 あるいは今年のオープン戦期間中、緒方孝市監督は、ライトの正位置を争う野間峻祥と鈴木誠也の2人を、特別にマツダスタジアムの […]

「綺想」の系譜――黒田博樹と高橋純平

 黒田博樹(広島)の復帰後、公式戦初登板は3月29日の東京ヤクルト戦だった。  7回を5安打無失点で切り抜け、今季初勝利をあげた。試合後のヒーローインタビューでとびだした、 「広島のマウンドは最高でした」  という言葉も、名言居士のこの人らしいセリフだった。

上田哲之「控えの力」

 たとえば2月3日、広島版のスポーツ紙の一面は何だったと思いますか(たまたま、この日、広島に行っていたもので)。「九里 侍推し」(日刊スポーツ)「ジョンソン 頭脳派」(デイリースポーツ)「野間 8発全開」(スポーツニッポ […]

決断と注目のとき――黒田とイチロー、大谷と岡本……

 前回、黒田博樹(広島)には文書ではなく、会見の形で広島復帰を語ってほしかった、と書いた。なぜなら、そうすれば、記憶に残る名言が聞けるに違いないから、と。あの時点で発表されていた文書の形では、黒田が一人で考え抜いた、いわば思考の現場とでもいうべきものが感じとれないではないか。と思っていたら、やってくれました。1月15日(現地時間)、自主トレを行っている米ロサンゼルス近郊で自ら口を開いた。果たして、それは名言というにふさわしい内容だった。

上田哲之「4番は誰だ」

 近年、メジャーリーグに移籍し、年月を経て日本球界へ復帰した選手は数多い。この国際化の時代に、当然といえば当然の傾向だろう。基本的には、けっこうなことだと思う。 ただ、日本球界からメジャーへ行く場合は、通常、一流あるいは […]

黒田博樹という生き方

 この年末年始の日本球界最大の話題といえば、やはり、黒田博樹の広島カープ復帰ということになるのだろう。なにしろ、まだ年末なのに、知人から「おめでとうございます」という連絡が来る。何のことかと思えば、黒田復帰である。年が明けると、「今年1年に限り、カープファンをやらせていただきます」という挨拶も数人にいただいた。それくらい、カープファン以外の多くの野球ファンにも衝撃を与えたニュースなのだろう。

2014年、日本野球の10大事件

<生れきて十八年のわれのこのきほこりを高くかかぐる  田部君子>  最近、お気に入りの歌である(池内紀さんの新著『戦争よりも本がいい』講談社「田部君子歌集」の項より孫引き)。これが、1933年(昭和8年)、当時、満17歳の女性歌人の作と聞いて、二度驚く。なんというか、まっすぐで心地よい。

上田哲之「緒方新監督に思う」

 いまさら、そんな古い話を、と思われるかもしれないが、今シーズンのカープの失敗の原因を考えてみる(今季の他球団との力関係から考えて、3位という結果は、やはり失敗というべきだろう)。 まずは、なぜ2位を死守できず、阪神に逆 […]

常識の罠――広島カープとヤンキースの試合から

 確かにセ・リーグもパ・リーグも、ペナントレースの最後の最後まで面白い展開だった。パ・リーグは福岡ソフトバンクが今季最終戦でオリックスをくだして優勝を飾った。ソフトバンク対オリックスは、正真正銘のペナント争いだったが、セ・リーグの広島、阪神は、2位争いである。クライマックスシリーズ・ファーストステージをどちらが本拠地で開催できるか、という争いだ。それも広島が5日の最終戦に勝つか引き分ければ広島、負ければ阪神が甲子園で開催できる、というところまでもつれた。現行のクライマックスシリーズという制度ならではの盛り上がりである。ただねぇ、結果的にそうなったのであって、今のプレーオフのシステムがベストだとは、とうてい思えないのだが。

上田哲之「逆転優勝の条件」

「疲労はないです!」 と菊池涼介は叫んだ。9月9日の中日戦、延長10回裏にサヨナラヒットを放って、試合後、お立ち台でヒーローインタビューにのぞんだときのことである。 そう言いながら、しきりに噴き出す汗をぬぐっている。疲れ […]

DeNA・中畑監督と東海大四・西嶋投手を結んでみる

 それが自分の生き方なので、としか言いようがないが、茫然と野球を眺めている。  今日もまた、ニューヨーク・ヤンキースのジョー・ジラルディ監督が、ベンチを出てトコトコ小走りに審判の元へ向かう。「チャレンジ」を要求するのである。メジャーリーグが今季から取り入れたビデオ判定のシステム。

吉田(東海大相模)のスライダー、和田(カブス)のストレート

 1年前、彼のことをどう書いたのだったかな。気になって当欄のバックナンバーを調べてみた。 <ストレートは144〜145キロ。スライダーが鋭い。(中略)2年後にドラフトにかかっても不思議はない>  彼とは東海大相模の右腕・吉田凌である。1年生だった昨夏は、神奈川県大会準決勝の横浜戦で先発。好投したが6回に横浜打線につかまり涙をのんだ。2年生になって迎えた今夏、東海大相模は再び準決勝で横浜と対戦し、リベンジを果たす。吉田は、向上との決勝戦に先発して8回2/3をゼロ封、3安打、20奪三振のド派手な快投を見せた。今夏の甲子園(全国高校野球選手権大会)の主役のひとりに躍り出たと言っていい。

グリエルの気品

 カッコいいなぁ、グリエル。横浜DeNAに新加入したユリエスキ・グリエルである。ご存知のように、「キューバの至宝」と呼ばれる内野手だが、キューバの政策もあって、日本のプロ球団と契約することが可能になった。キューバと言えば、巨人のフレデリク・セペダやレスリー・アンダーソンもそうだけれども、グリエルはちょっと別格である。

田中将大とダルビッシュ、ときどき菊池涼介

「でも僕は無理ですね。ああいう圧倒的な投球はできないので、これからも泥臭く抑えていきます」  もちろん、多少の謙遜、あるいは先輩への遠慮が含まれているのだろう。ただ、本音でもあると思うのだ。声の主は田中将大(ヤンキース)。5月9日(現地時間)のレッドソックス戦で、ダルビッシュ有(レンジャーズ)が9回2死までノーヒットの快投を演じたことを指してのコメントである。

Back to TOP TOP